河野村は南北約十五キロにわたり日本海に面し、詩情豊かで、山紫水明に恵まれた美しい景観をもつ反面、背後には急峻な断層が迫り、面積の九十パーセント以上を山林で占め、わずかな海岸沿いの土地と、中山間地の谷間に集落を構え、先祖代々海と山を資源として生活を営んできた村であります。
その長い歴史の中で中世期には畿内より北陸に通じる海陸交通の要所として栄え、また江戸中期以降は北前船の村として繁栄した時代もありました。
明治二十二年の市町村制の施行により、本村も人口三千九百余りの村として出発して、現在まで未合併の生まれたままの姿できた独立村であります。昭和三十年代より高度経済成長の波を受け都市部への人口流出が始まり、昭和五十年ごろから一応流出がとまり横這いとなりましたが、最近は少子化も加わり、再び過疎現象となっていることは憂慮に堪えないところであります。
現在、本村に生をうける私どもは、以上の村の歴史を厳粛に受け止め、先人たちの努力と功績を継承して先人に恥じない村づくりに村民一体となって努力すべきことこそ、父祖の遺訓と考えるものであります。
一方、現下の国内情勢は全般にわたりきわめて厳しいものがあり、さらに地方分権如何によっては村の存続にもかかわる重大問題が予想される中でありますが、自然と人間と文化の調和した郷土のよさを守り続けねばと念願しているところであります。
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